本日6月9日(日)13:40より、法政大学市ヶ谷キャンパス富士見ゲートにて、学科別の学習ガイダンスが開催されました。
私の所属は経済学部商業学科なので、6階G602教室にて福多裕志先生のガイダンスを受講いたしましたので、個人的に重要と思った部分を中心にまとめておこうと思います。
※あくまでも個人的な備忘録の域ですので、参考程度にご覧頂ければ幸いです。
※質疑応答及び学習ガイダンス終了後に開催の教職事務ガイダンスにつきましては割愛致します。
本年4月に開催された『初学者向け学習ガイダンス』については以下の記事を参照。
なお、本日のガイダンスに参加できなかった方も、以下のリンク先(法政大学通信教育部Webページ)から昨年の動画をご確認頂ければ、商業学部についてはほぼ同じスライド資料でしたので補完できるかと思います。
概要
日時:令和元年6月9日(日)13:40〜15:40
会場:法政大学市ヶ谷キャンパス富士見ゲート6階G603教室
主催:法政大学通信教育部
講師:福田裕志先生(経営学部)
人数:ざっと20〜30名程度
配布:以下の通り。
プリント『通信教育部の卒業生に学習のコツをきける!』
プリント『2019年6月9日実施 学習ガイダンスアンケート』
スライド『商業学科においてどう学ぶか 一つの見方と提案−改訂版−』※
※スライド資料は配布なし。大学HPよりダウンロード可能との事ですが、ページを見つけられませんでした(一応、前出の昨年度実施分の動画にてスライド内容を確認可能)。
【令和元年6月11日追記】
大学のWeb学習サービス『Campusmate』トップページの「Information」欄から「6/11 (火) NEW2019年6月9日(日)学習ガイダンス 商業学科講演資料の公開について」をクリックしてスライド資料のPDFをダウンロード可能となりました(公開は期間限定のようです)。
コメント欄から情報提供して下さりましたあるけみ様、ありがとうございました。
講演テーマ「商業学科においてどう学ぶか」
福田先生は通信教育部では、商業学科で経営分析論をご担当されていらっしゃるそうです。
従って、本日のガイダンスについて「経営分析論を学んでいない方にも有用な内容にしたいが、自分の専攻が経営分析論なのでどうしても内容が経営分析論に寄ってしまうかもしれない事は了承してほしい」とのこと。他の道についてもっと詳しく知りたい方は、やはりその道の専門家(担当者)に訊いた方が良いそうです。
そのため、本日は「私の見方・見解」として「提案」という形を取るとの事です。
以下、個人的な興味を中心にまとめます。
目次
- 大学で何を学ぶ?
- 方法論の重要性
- 科目選択
- 文献収集
- リポート・論文の書き方
- 注意!:剽窃とカンニング
- まとめ
- 質疑応答
本年度の入学案内に登場しているが「3つの言語の理解を深めよう!」という掲載がある(『法政大学通信教育部2019入学案内』P.14参照)。
※以下のリンク先(法政大学通信教育部Webページ)からPDFを閲覧できます。
3つの外国語を学ぶという事ではなくて、自然言語、コンピュータ言語、企業(経済、経営、会計)言語の3つを意味している。
目次の3.以降は技術的な項目。
論文の書き方については、別途ガイダンスの機会を設けているのでそちらを受講されたい。
さまざまな目的
この目的さえ明確になっていれば、通信教育部でしっかり勉強して卒業される事は問題ないと思う。それ以上に、仕事、職場に活かす、これから職場を探す等、こうした目的を持っている人は強い。
次に資格、経営学関連の資格を取る。これは日経新聞の記事『会う資格 選ぶコツは?』に記載されている資格一覧を見ても、経営学関連ばかりが並んでいる。なお、ファイナンスは今日ほぼ数学領域であり文系領域ではなくなっている(証券アナリスト等)。また週刊ダイヤモンド2017年3月4日号記事『文系こそ学べ! 数学のロジック』にあるように、まさに今日の経営こそ数学を学ぶべきである。
さらに、上級の教育機関(大学院)を目指す方や、他にも個別の理由がある方もいるだろうが、いずれにしても目的さえ明確であれば問題ない。
1 大学で何を学ぶ?
「科学的なものの見方、考え方を養う場である」というのが福多先生の見方。
科学的という言葉の定義だけで1年間議論することも可能だろうが、ここではスライドに示した定義とする。
経営学が生まれたのは産業革命以降であり、それ以前は地場産業程度の規模だったので無かった。産業革命以降の大企業は革命的な影響を与えている。これだけ国の経済に対して影響力を持つ「企業」とは何なのか。それを明らかにするべく経営学における研究対象は「企業」である。また、様々な研究手法が確立されている。所産は様々な論文や文献等で日々公開されている。故に経営学は「科学」であると言える。
科学の一つの分類法
少々古い分類法にはなるが、今日においても有効な分類として、社会科学、人文科学、自然科学とあるが、経営学は社会科学である。
社会科学の領域
経営学部と経済学部の違いとは?
経済学
経済学と経営学は、かなりの部分は積集合といって重なっている部分が当然ある。兄貴(姉)は経済学であり政府、企業、家計の3つの経営主体を対象とするが、産業革命以降特に重要となった大企業を扱う経営学は弟(妹)。
経営学部(≒経済学部商業学科)
最近は企業経営のみならず様々な組織経営に適用可能。おおよそ「人がいて、資金が流れていれば経営」であり、マネジメントという言葉が合う。
従って、商業学科で学んだ事は病院やNPOに務めるとしても適用可能であり、家庭にも適用可能(単式簿記などがその一例)。
商業学
最近はマーケティングという言葉が使用されることが多い。
最近は概念が広くなっているので、商業学科を経営学科と呼んでも差し支えないが、どちらも有している大学もある。しかし、見比べても明確な差は見受けられない。
経営工学
数式や数的モデルを多用し、数量的に表現された経営システムを学ぶ。やっている事は同じだが、数式や数的モデルを多用するので、ファイナンスや生産管理等と相性が良い(合理性を数的に・定性的に表現する)。
経済学・経営学・商業学・経営工学系の4者関係図
経営学と商業学はほぼ同じだが、若干ずらしてあるのは僅かに違うという意見もあるから。経済学は経営学と独立しているところも多く、経営工学は経営学とかなり重なっており経済学とも多少重なっているが、数的領域を中心にかなり独立している部分もある。従って、経営学部に所属していても経営工学的領域の研究をしている方もたくさんいる。
例えば「自分は会社の経営で収益性が一番大事だと思っている」という人と「会社の経営で重要なのは財務安全性だ、潰れてしまったら利益も何もない」という人がいる。お互いにデータによる主張ではなく「経験」によるものだから決着がつかない。そういう時に、もし統計学の知識があれば、これは世界共通の知識なので「このデータに基づけば結論はこう言えます、こう解釈できます」と言うことができる。ただ、それを経営者が受け入れるかは別(しかし、その人が受け入れなかったとしても、世界中どこに持っていってもその結論・解釈の仕方は同じである)。
経営学は企業(組織)の研究が中心
以上が商業学科で経営学を学ぶ際にイメージすればよいこと。
2 方法論の重要性
学ぶ内容がわかったら、次は学び方が重要となる。
よく「3つの言語を学習せよ」と言ってきたが、外国語のことではない。
1)自然言語
自然言語は日本語などを含める。
まず母語が重要であり、英語の他にも各々の状況において必要とする言語。だいたい英語でいいですという人は英語でよいが、例えば中南米にビジネスしたいというのであれば現地の言語を使える必要がある。学習する言語は量的重要性(もっとも使用されている)という意味から、英語を推奨する。質的重要性を議論し始めたら結論は出ない(韓国に行けば韓国語、中国に行けば中国語と、どこでも自分の母語が重要・優越していると考えるだろう。それらの言語はどれも重要だが、しかしそれではどの言語を学習すればよいか結論を出せなくなる)。残念なことに、日本語という特殊な構造の言語を母語とする日本人にとっては、外国語を習得するには大きなエネルギーが必要になる。例えば、フランスとドイツに接しており英語話者が流入してくるスイスなどは3〜4ヶ国語習得するのも苦はないだろう。小さい頃から刻み込まれていれば出来るが、日本は海に囲まれていて原則的に英語話者とは遮断されている。まさに勉強として英語を学ぶことになるので、ものすごいエネルギーが必要となる。アラビア語、中国語、韓国語、ロシア語など多言語を3ヶ国語以上、ビジネスレベル(挨拶などは含めず、企業内で母語話者と同レベル)で話している人をほぼ見たことがないし、5ヶ国語以上はまず無い。
ネット上の英語情報量は50%以上とスライドに書いているが、情報によっては6割〜8割以上とする情報もある。従って、特に特定の言語を学ぶ必要性があるわけでないならば英語を推奨する。
2)コンピュータ言語
商業学科でコンピュータ言語は外せないだろう。
プログラミング言語を専門としていない者にとっては、これらの言語を自分で習得し、プログラムを組んで実行するのは非効率である。経験談として、昔はフォートランでモナリザの顔を消すのに何十時間もかけてプログラムを書いたが、プロが見ればこんなものは1/10程度で済む「餅は餅屋」。それならば、(プログラム言語を学習したいという方は別として)専門家が作成したアプリケーションソフトを購入して、活用した方が良い。昔はメインフレームと呼ばれる巨大なコンピュータを一部の人が使っていたが、今は薄型のPCをみんなが使っている。メインフレームは昔の数百万円だったが、今の1〜2万円程度でエクセルのアドオンを購入して、仕事で目をみはる効果が出せるなら十分ではないか。そういう意味で、コンピュータ言語に精通することも重要である。
製造現場では大企業だとすでにAIが製造機械に組み込まれている。生身の人間は寝るが、AIは不眠不休で学習し続けている。数日前の日経一面にAIを導入する際の倫理規定が掲載されていたが、AIの暴走に備えて緊急停止スイッチを設けるよう定められていたが、そんなものはAIも理解しているからスイッチを回避したり作動させる人間を攻撃するだろう(既に『2001年宇宙の旅』で予言されている)。機械学習から現在では深層学習(ディープ・ラーニング)に至った時代であり、生産現場では既に導入されている。デザインや設計は「生身の人間しかできない」と言われているが、例えば芥川賞などではAIの作品が1次・2次の選考を突破している。そういったAIを取り込まなければ勝てないし、取り込んだ企業が勝てば他の企業も追随するのは確実。経営は合理的な意思決定であり、AIはまさに合理的な意思決定、最善の代替案、どの経路が最適かなど、最適解を示すことが最も得意とする領域である。将来、9割以上の企業がAIを取り込んだ企業が勝つだろう(これらの予想はデータに基づく予想ではないが)。
自然言語なら英語を推奨したが、日常会話レベルなら家電量販店で販売されている機器が翻訳してくれる(しかも非常に質が良い)。また、Skypeなら『Skype Translator』が相当突っ込んだ内容まで翻訳してくれる。
カーツワイル氏が2045年にシンギュラリティを迎えると予想している(全ての能力においてAIが人間を上回る事)。
まとめると、まずは効率的なアプリケーションソフトを使用してみましょうという話で、特に何かソフトがあるわけではないならまずはエクセルのアドオンから始めてみましょうと言う話。
3)企業言語
最たるものは簿記。泥棒に盗まれたら淡々と資産減少、火災にあったら淡々と費用計上、それが簿記の文法である。
3 科目選択
『学習のしおり』と『設題総覧』にびっしりと書いてあるので、それをしっかりと読んで科目選択をしてくれれば良いと思う。
自然言語もコンピュータ言語も、卒業後も長い期間にわたって有効である。
自分が属している企業のこう言うことと紐付けしたいという人も多い。加えて、汎用性の高い科目(英語や統計学)も有効。AIのビッグデータは統計学で処理している。
AIを自由に操れる、ビッグデータを自在に操れる、そういったデータサイエンティストが不足しており、年収の桁が違う。
4 文献収集
スライドの通り。
5 リポート・論文の書き方
まず論文の書き方は別途ガイダンスの機会があるので、そちらを受講して欲しい。
リポートについては、問題(設題)が与えられているので、その設定に合わせて文献収集を行い、自分の考えを述べれば良い。リポートを書く時の注意点として、注や参考文献が明らかにされていないことが多い。注や参考文献が示されていないと記載の全てが自分の表現であるということになり、そういった文章はそのまま出版できるレベルの文章になるだろうが、基本的にそのようなレベルの文章は福多先生の場合は再提出を命じている(引用、注、参考文献の記載が一切なく、文章が完璧、そのまま出版しても問題ないレベル、という場合)。
文体は「である」調で統一する。また、漢字もほとんどの人が読めないような漢字を使用するのではなく、ひらがなを使用する(PCで漢字変換すると難しい漢字も簡単に変換できてしまうが)。放送禁止用語等の差別用語は使用しない。注や参考文献の振り方については、スライドを参考にされたい。
論文については『学習のしおり』に記載あるので参考にされたい。
技術面
参考文献をあげる場合、ぱらぱらとめくった程度ならページ数不要だが、具体的に何ページを引用したという場合はページ数まで明記すること。
6 注意!:剽窃とカンニング
盗作・剽窃
非常に厳しく処分が行われるので、こういうことがないように。
少なくとも、参考にした文献があれば明記する、この部分を引用しましたと言うことが明記されていれば、仮にレポートのかなりの部分が引用であったとしても問題はない(ただし、評価は知りませんが)。
今は、どれだけ人の文章を引っ張ってきたのか(コピペの割合)を調べるソフトがあるので、決して剽窃を行わないこと。
7 まとめ
同期に従って興味あることを学習してください
研究対象は企業なのでそれを中心に科目を選んで学習してください。
『学習のしおり』『設題総覧』をよく読んで学習を開始してください。
おすすめ書籍『統計学が最強の学問である』
感想
本日の学習ガイダンスを受講してみて、自分自身意外に感じたのですが、改めて商業学科で学習するにあたっての位置付け(学問領域としての位置付けと、自分自身の中での位置付けの両方)を再認識する事に新鮮味を感じました。
特に「3つの言語」の話については、こういう捉え方があるのかと刺激を受けました。
また、統計学とエクセルのアドオンに手を出してみようかと、割と本気で興味をそそられました。
全体的な印象としては、何か「今日から使える」という意味ですぐに役立ちそうな話というよりも、これから商業学科で学習を進めていくに際してのスタート的なガイダンスという印象でした(つまり講演テーマ通り)。
ご担当された福多先生におかれましては、貴重なお話を頂きましてありがとうございました。
入学したての方は、なるべく早めに1回は受講しておいた方が(あるいは前出の大学Webページから昨年の動画を視聴しておく)良さそうだと思います。
以上、本日の学習ガイダンス(商業学科)まとめでした。